庭師とお姫様 (naturally番外編)
これで冷戦状態に終止符を打ち、和睦を結べるならクロチェにとっては悪い話ではない……というのが皆の総意。



ミリザ姫自身に拒否権など端から存在していなかった。



それを察したミリザ姫は静かに王を見据える。



いつも厳しい眼差しをしている王の表情には、にわかに陰りが見えた。



「おまえにこんなことを告げるなんて……亡くなった母親に申し訳が立たん」


おまえの代わりに私がミリザを守っていく。



……病に伏した母親に王がかけた最後の約束。



それがこんな形で反古されてしまうとは、王も夢にも思っていなかったのだろう。



クロチェ国皆の総意とは言え……心が納得していない。



一国を担う王に、一人の父親としての感情が浮かんだ瞬間だった。


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