夢見るきみへ、愛を込めて。

いっくんは還らない。もう二度と逢えない。泣きじゃくる私を、大丈夫だよと慰めにきた司さんへ告げた事故の夢。


『ごめんなさい』


青ざめた司さんに謝ってからの記憶は、ぼんやりとしている。


情報を求められても、居場所など分かりっこなくて。喪失感しかなくて。腑抜けの殻になった私はひとり残され、周囲はとても慌ただしかった。


遅かった。何もかも。
間違っていた。すること全て。


「私しか、守れなかったのに。私が、守らなかった」


秘密にすると約束したことも。臆病で引き止められなかったことも。いっくんが誰より何より大事だったからなのに。


嫌われたくないと。離れないでほしいと。私がいちばん守っていたのは、私自身だった。


ほとんど役に立たない夢の情報を渡し、捜索が行われることになった時。約束を破った罪悪感でいっぱいだった。

事故現場が自宅からバイクで4時間以上もかかる県境の山道であったと聞いた時。本当に意味のない力だと無力さでいっぱいになった。

血痕が途切れた崖から転落した可能性が高く、四囲が雪で覆われていたため困難を極めた捜索は打ち切られ、生死不明者とされた時。諦めの声が出る一方で、私に一縷の望みがかけられた。


生きてさえいれば、私が、夢に見る。だけど何ヶ月経とうと、いっくんの未来を見ることはなかった。


『なんのための力なんだか』
『糞の役にも立ちやしない』
『司くんが不憫だ。母親も姉も、息子まで』
『あの子を可愛がった人から順に亡くなってるなんて……気味が悪いよ』


なじられるのは慣れっこだった。その通りだと思ったし、私のせいじゃないと慰められるほうが嫌だった。
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