夢見るきみへ、愛を込めて。

「……全部、私のせい」


コントロールできない力を中途半端に扱って、ただひとりに依存して、周囲に配る心を持たなかった。私を心配する人がいても、いっくんがいなくなったら私はどうやって生きていけばいいんだろうって、考えるのはそんなことばかりで。

考えて考えて行き着いた答えは、全部自分で撒いた種、だった。


「私は、私を死ぬまで、許さない」


大事な人を守れなかった自分のことも。大事にしよとうしてくれた人の手を払い除けた自分のことも。誰に許されようと、私だけは。


これがせめてもの償い。悪者でいい。疫病神と言われても平気。愛想なんて振りまかない。好かれようとは思わない。後悔したって巻き返さない。


いっくんさえいれば他に何もいらなかった。今は思い出しか残っていないけど、今も色褪せることなく鮮明に、残っている。


……残っているんだよ。3年経っても昨日のことみたいに。


忘れられるわけないでしょう。自分を愛してくれた、宝物のような思い出を。手放せない。目移りなんてさせない。いっくんを失ったから、別の誰かに愛してもらおうだなんて、虫酸が走る。


「きみが変わりたくないって言うのは、自分を許せないせい?」


なんだか私ばっかり話していたから、彼が聞いているということを意識していなかった。


「そうだね……そういうことにも、なるのかな」


こんな風に話すなんて、翠にだってしたことない。
特別誇れるものじゃなくたって、うんと幸せじゃなくたって、私は私の生き方を揺るがされたくなくて。干渉もされたくなかった。


「その、事故に遭った人の、家族は……きみを責めてるの?」

「責めないよ。昔から、嫌味も暴言も吐けない人だから」

「きみの、家族は?」

「どうかな。早く忘れてほしいんだろうなって感じたことは、何回もあるけど」

「……」

「無理だよ。忘れるなんて」
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