夢見るきみへ、愛を込めて。
怖かった。もしまた死に結びつく夢を見たらどうしようって。引き受けても、何年も、一生見ることはないんじゃないかって。仮に何か見たとして、司さんが喜ぶ未来なのか悲しむ未来なのかって考えたら、怖くてたまらなかった。
だからお父さんは会いに行かないでほしいと司さんを止めてくれたのだろう。司さんも再び頼む気はなかったはず。私だって、できることならこれまで通りでいたかった。
でも、守られてばかりではいられない。
「何か見たら、知らせます。役に立つ情報が得られる保証なんて、ないけど……」
囚われちゃいけない。悪い夢ばかり見るわけじゃないんだから。恩に報いたいのなら、怯えるな。
強く握りしめた両手に大きな手が重なった。じわりと溶けるような司さんの体温が、震えを止めてくれる。
「見た、ってことだけで、充分だよ」
おそるおそる顔を上げると、目の周りを赤くさせた司さんが深く頭を下げた。
「ありがとう」
蚊の鳴くような声で言われ、私の台詞だと思った。強くなくても綺麗じゃなくてもいいから、こんな風になりたいと思った。
遅くはないだろうか。いっくん以外の人に心を開いても、私はこの世界でちゃんと生きていけるのかな。
未来は分からない。なんて当たり前のことが、未来を夢に映す頭によぎって、少しだけおかしくて、苦笑が漏れる。
彼の言う通りだ。これからの人生、どうなるかなんて決まっていない。
そっと視線を上げると、遠くに見える雄大な山々の稜線を夕日が照らしていた。その鮮やかさは、夢で見た花束を思い起こさせた。最初は献花のように思えて墓参りに来たけれど、何かのお祝いだったのかもしれない。……そうだと、いいな。
誰ともつかない未来を生きる男性を思い浮かべながら、私は自分が生まれた街でもう一度、生まれたような気がした。