夢見るきみへ、愛を込めて。
帰り道、はじめてお父さんにメールを打った。
小百合さん宛の、どうでもよさげなDMを接ぎ穂に、冷え込んできたから体調に気を付けて、と。お父さんはすぐに返信をよこし、私の心配もしてくれた。
『捨てていいそうだ。他にも届くかもしれないから、申し訳ないけど知らせてほしいって。そっちはまた雪が降るみたいだな。あまり薄着するなよ』
要点だけのぶっきらぼうな返信を、私は思い立っては繰り返し見していた。読み返すたびに発見があるようで、気付くとまた受信フォルダーを開いている。
司さんと別れてから数日経って、私はぴんと張り詰めていた糸がほんの少しだけゆるんだ、そんな心境でいた。
だからといってこのまま全てを委ねることはできなくて、もはや意固地になっているだけじゃないかって言われても、私はどうしたっていっくんを忘れられないし、自分のことだって許せない。
何もかもリセットしてやり直そうとしたって、一度芽生えてしまった罪悪感や後悔は枯れることなく育つ機会を伺っている。誰に見張られているわけでもないのに、強迫観念のように。
お父さんからの返信は、それらを一瞬だけ、取り除いてくれるような気がした。
家族の再生を望んでいるわけじゃない。お父さんは私がいたほうが幸せになれると思い直したわけでもない。決めつけるのを、やめてみただけ。
感じたものをそのまま受け入れるのは難しくて、時には跳ね除けてしまいたくもなるけれど。彼の、ように。寄り添うことをためらわずにいれば、これからはお父さんや司さんや、翠のことも、傷付けずに済むんじゃないかって。
つらかったり、苦しかったり、痛い思いをするのは私だけでいい。あの夜数えた大事なものを、失いたくないものを、守りたいものを、考えて。扱いを間違えないようにって、今はそれだけを。