夢見るきみへ、愛を込めて。
「まあ、そういうこと。ブラコンでまいっちゃうよね」
相も変わらず茶化す彼の心境は読めない。それでも、自らをブラコンと称する彼にとって、妹という存在が大事なものだということくらいは私にだって分かる。
脳裏に浮かぶ、私の小さな妹。ほとんど触れたことも話したこともないユリカでも、泣いているところは見たくない。笑顔のほうがよっぽっど見ていたいって、お父さんや小百合さんも思っているはず。
「……私は長いこと、ひとりっ子だったけど……あなたみたいな人に笑っていてほしいって思われるのは、すごく幸せなことのような気がする」
ひとりじゃないって、想ってくれる人がいるって、特別なこと。
特別なんだ。誰も彼もが得られるわけじゃない。失う怖さから、目を逸らしてばかりいた私が言えることではないけれど。そんな私だから、気付いたこともある。
「今は、煙たがられることが多くても、必要とされる時がくるよ。あなたがいて、よかったって日が」
時間がかかっても、いつか。後悔を伴いながら、前を見据えて。めげずにいてくれたあなたへ、笑顔を向ける日が。
「くると、いいね」
絶対とは言い切れない私に、彼は奥歯を噛み締めた。泣き出しそうに見えた表情は、その切なさをわずかに残したまま、一瞬で微笑みに変わる。
「きみにも」
たったひと言。出逢ったばかりの私なら聞き流すだろう台詞に、心臓が過敏に反応する。
彼の話を聞いていたはずなのに、私の心まで覗かれた気がして。嬉しいような、哀しいような。泣きたいような、笑いたいような。色んな感情が交差して、私も彼と同じような笑みを浮かべてしまった。
……そうだね。くると、いい。私にも、そんな日が。
訪れたらと考えると、なぜだかとても寂しくなってしまうけれど。今はこの宵闇の中で、まどろむように全てを受け入れてみたかった。
そのあとは何時だろうとか星がきれいとか実のない会話をぽつぽつ続けては途切れた。ただ息をするのと同じように、お互いそばにいた。
「このまま夜が明けなきゃいいのにって、たまに思う」
隣に座り続ける彼がこぼした言葉の意味を、考えることもなく。私は彼から漏れる白い息がゆっくりとのぼって消えていくのを、見ていただけだった。