夢見るきみへ、愛を込めて。


……またか。

雪虫を探しながらの帰り道、背後から視線を感じた。


深夜1時半過ぎ。今日は酔っ払いの大学生らしき数人が後ろで騒いでいるから、さほど危機感はないけれど。


終電に乗れない日はバイト先から歩いて帰っているというのに、どこからついてきているんだろう。待ち伏せていたにしても、今日はやめておこうと思わないのかな。


2日連続なんて今までなかった。

尾行は司さんの依頼だと踏んだけど、違うのかな。まさか本人? でも司さんなら声をかけてくるはず。


「……、」

目前に迫った横断歩道の信号が青になったのが目に入り、足早に歩く。


誰だろうと、あとをつけてくるだけなら構わないと思った。

頼りない街灯が照らす先の道は暗くとも、このまま100メートルほど直進したあと角を曲がって、走り出せばいい。いつものように、マンションへ駆け込むだけ。


「俺はぁー! クリスマスまでにぃー! 彼女を作りまーす!」


後ろでは酔っ払いが妙な宣誓をして、友人がゲラゲラと笑っている。青信号は、私が横断歩道の半分を過ぎたところで点滅を始めた。


恐らく私をつけている人は毎回、一緒に横断歩道を渡ってきていない。だからいつも、横断歩道を渡りきったあとは少なからずほっとする。けれど今日は一抹の安堵感を、車のブレーキ音が無情にも消し去った。
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