夢見るきみへ、愛を込めて。
お父さんを見上げる私の視界には、朝日を受ける埃がちらちらと舞っていた。
だから日当たりのいいリビングは好きじゃないと言ったのに。
それもまた私たちが家族になれなかった要因のひとつでもあることを感じた瞬間、靄が晴れるみたいに、目に映る情景がクリアになっていく。
――6時……56分。
思い出した時刻と、目に入った時刻は一致していた。
「昨夜未明、六角市の交差点で、横断歩道を徒歩で横断中だった大学2年生の男性が、左から来た乗用車にはねられました。男性は病院に運ばれましたが、頭などを強く打っていて、意識不明の重体です。警察によりますと――」
耳に入ったのは、数時間前に私の背後で起きた事故の報道だった。
ああ、最悪。見ないならテレビは消してほしいと、あれだけ言ったのに。なんて頭によぎったことも。必死にかき消そうとした事故現場や轢かれた男性が、再び脳裏に浮かんでしまったことも。
最悪だ……何もかも。
きりきりと痛み始めたのは胃か、頭か。鋭い痛みに気を取られていると、お父さんはそばに置いていたボストンバッグを拾い上げる。
見覚えのある光景だった。このあと何を言われたのか、あの夢では聞き取れなかったけど、自分の顔にへばりついていたのは濡れたまま北風にさらされていた髪だったということは、今ようやく分かった。