夢見るきみへ、愛を込めて。
「もっと自給の高いところで働きたいって理由で辞めた人間が、顔を合わせてもねえ」
「またそんなこと言って。店長も誰も気にしてないって。むしろ戻ってきてほしいって相談されてるくらいなんだから」
「有難いけど、戻るのは厳しいかなあ」
「分かってるってば。だから誘ってるんでしょーっ? もう……飲み会は仕方ないけど、たまには顔出しに来てよね」
口を尖らせる翠に苦笑し、私は今回も不参加が決定した。
毎回断りを入れるのは申し訳ないと思う。ほとんどバイトがあるせいだけど、二次会、三次会があれば少しくらい参加できないこともない。それでも断ってしまうのは、今はことさら外を出歩きたくない気持ちがあるせいだ。
撫で上げたうなじからは、ざわざわする感覚は消えている。
怖々と背後を盗み見るも、そこにあるのはいつも通りの日常だけだった。
「灯さあ、やっぱりまた痩せたんじゃない?」
先日も同じようなことを言われ、昨夜計ってみたら見事に体重が落ちていたので笑ってごまかす。
学食のオムライスを持った翠は溜め息を零し、先におにぎりを食べていた私の隣に腰掛けた。
「ちゃんと食べてる?」
「食べてるじゃない、今も。これ今日で3食目」
「そのおにぎり、2時間前に食べてた残りじゃん。灯は1食が少なすぎるんだよー。お願いだからそれ以上細くならないで」
あたしが太く見えちゃうんだから、と翠はふわりとしたニットスカートから伸びる自身の太腿を二度叩く。黒いタイツを履いているのを抜きにしても、太いなんて思ったことはない。
私の脚はいつからか、Sサイズのデニムパンツを履いても少しゆとりができてしまうようになった。