夢見るきみへ、愛を込めて。
「今、見て比べたでしょ」
「え、や……う、うーん……私、まずいかな」
「まずいに決まってるでしょ! 灯の細さはモデル並みじゃないから。ガリガリ一歩手前の不健康な人だから。ほらっ! もう少し食べなさい!」
すでに満腹だというのに、翠は自分のオムライスを二口以上もスプーンにとって、差し出してくる。まるで世話好きなお母さんみたい。
「おいしい?」
しぶしぶ口に含んだオムライスの卵はとろとろで、熱すぎるほどにほくほくで、おいしくないわけがなかった。
二度頷けば翠は満足そうに笑い、学食の窓から外を見遣る。
「今日、雨すごいねえ」
周りの騒がしさで雨音は聞こえないものの、滝のような雨垂れを見ればその激しさは一目瞭然だった。
「風も強いね。傘飛ばされないといいけど――…、」
ふっと反対側に向けた視線の先。食券機の前で「売り切れかよ!」とひとりの男子が嘆き、隣にいた友人が肩を揺らしている。
「雪になったらやだなあ。あたし高2のとき滑って転んで手首骨折してさ……、灯?」
ふたりの男子に意識を持っていかれていた私を、翠が覗き込んできた。
「え? うん、骨折して、どうなったんだっけ」
「それはもういいや。また何かビビッときた?」
童顔の翠は、くりくりとした瞳を私の薬指に向ける。また無意識にテーブルを叩いていたらしい。
気を付けているのに、楽しそうとも嬉しそうとも取れる顔をほころばせた翠に、なんでもないとは言えなくて。
「たぶん……電車が止まると思う」
見覚えのある光景から引っ張り出した記憶を、告げた。