夢見るきみへ、愛を込めて。


引っ越し資金はあるにしても、毎月家賃を払うことを考えると頭が痛い。お父さんに頼ることは避けたいし、バイトをこれ以上増やすのは厳しいものがある。


「灯、ちゃんと朝ご飯食べた?」

「朝ご飯? グリーンスムージー」

「寒っ。せめてスープとかさあ……」


今朝、ストーカーを見掛けることはなかった。今のところ視線も感じていない。また来るって、いつよ。夜に来るってこと?

ノートに安易な星や三日月を描いていれば、影が重なる。翠が上の空だった私を咎めるように顔を覗き込んでいた。

「ひとり暮らしは慣れた?」

「……慣れるも何も、元から家で過ごすこと自体少なかったし。お父さんからも留守電入ってたよ。どうだ?って」

「どうなのよ」

「うーん。家事は中学のときひと通り覚えたから、特に不便はないかな。思い出すのにちょっと苦労したけど。ゴミ捨ての日、とか……」

その日が明日であることに気付き、うなだれる。

「ゴミ、捨てなきゃダメかなあ……」

「異臭を放つ家なんて行きたくないよ、あたし」

私だってそんな自宅に呼びたくないけれど、そういう意味じゃない。


相談、してみるべきかな。

でも現時点でこれといった迷惑行為はされてないし、根掘り葉掘り聞かれるのは正直なところ苦手だ。翠は人の嫌がることをするような子じゃないけど心配性だから、下手すると警察に相談しようとか言い出しかねない。


あのストーカーも今のところ外で待ち伏せているだけだし――それが正常なのかは置いといて、話がしたいだけなら自分でどうにかできる。

私は話すことなどない。
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