夢見るきみへ、愛を込めて。
「つらそうだなんて、知ってる風に言わないで。ちゃんと分かってる。ひどいことをしてるって、もっとべつの生き方があるんじゃないかって……っだけど私は、こうしてないと、」
夜も怖くて眠れない。
私を撫で、抱きしめてくれたぬくもりを失って。私をハルと呼び、笑うことを許してくれた言葉たちまで忘れてしまったら、私はきっと生きてすらいけない。
勝手に人の未来を盗み見て、嬉しそうに口にする、幼くて愚かだった自分。
避けられて当然だった。利用されて当然だった。役立たずと分かれば見放されて当然だった。
無意味な力。私をひとりにした力。周りから人がいなくなって、近付けばよそよそしい態度を取られて。こんな力、消えてしまえばいいと何度願ったか。
『そんなこと言うなら、僕の夢しか見られないようにしてしまうよ』
今でも思う。どうやって。方法なんてない。ただの言葉遊びだ。それでも、
『大丈夫だよ、ハル。夢の中でも僕に逢えると思えば、怖くないでしょう』
唯一だった。
自分の夢を見続けてほしいなんて、誰も望まなかったことを望む人。
関われば関わるだけ、夢に見るのに。目を合わせて、触れて、私が眠るまでそばにいて、起きるのを待っていてくれた人。
変わらないでほしいと思った。自分さえ変わらずにいれば、いっくんだけでもそばにいてくれると思った。いっくんさえいれば、他に何もいらなかった。
……失って、しまったけれど。
それでも変わらない。変えようがない。
いっくんに愛されたことが私の自慢だった。幸せでもあった。だから生きてこられた。
もう抱きしめてもらえなくたって、話が出来なくたって、私の世界を彩ってくれるのは、今も昔もひとりだけ。
たとえ今が私だけ取り残されたような世界だとしても。
いっくんに逢えるなら、眠ることは怖くない。