夢見るきみへ、愛を込めて。

「残念。お兄さんに話してごらんって言おうと思ったのに」

「はあ……」

「今、あっても話さないしって思ったでしょ」

思ったけど、今、何か、流してしまった気がする。

「俺ってそんなに頼りなく見えるかなあ」


立ち上がった彼が少しふてくされているのを見て、違和感の正体を掘り当てた。


「お兄さん?」

「え」と彼が視線をよこす。

確かに頼りがいのある人には見えないものの、兄、という括りであれば見えなくもない。でも、そうか。

「年上だったんだ……」

ひとりこぼした私は、彼が目をまん丸くさせてから、もごもごと口を動かして苦笑するのを眺めていた。


「たまに高校生と間違われるよ。まさかきみにまで、そう思われていたのはショックだけど」

「あ、いや……同い年くらいかな、と」


言えない。高校生にも見えると思っていたなんて。言えるわけないけど、きっと気付いているんだろう。だって彼は疑いの眼差しを向けておきながら、ひと瞬きの間に頬を緩めているのだから。


「俺はきみのひとつ上。いちおう、こんなでもね」

「こんなって……1個差なら、大して見た目変わりませんよ」

「そうかな」

そうですよ、って。なんで私がフォローしなくちゃいけないんだ。そもそも私の歳まで知っていることだって納得いかないのに。

ゆるりと彼がいつも座っている場所へ視線を送る。


「私が捨てたゴミを漁ったりとか……」

「は!? 何急に! そんなストーカーみたいなことしないよっ」
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