夢見るきみへ、愛を込めて。
降車駅を出て、不格好な傘を開く。雨足は夕方よりも弱まっていた。それでも絶え間なく排水溝へ流れていく雨水を、ぼんやり眺めながら自宅までの道を歩く。深夜0時すぎの横断歩道を渡るのは、私ひとりだけだった。
柔く発光する青信号が点滅を始める。急かされる気持ちになっても歩調を変えずにいると、襟足がぞくりとした。
いつも振り返りそうになって、思いとどまる。
どうして。疑問が真っ先に浮かんでも、振り切るように足早になる。11月中旬あたりから、12月に入った今でも。
いったい何回目だろう。今週、というか今日は昼間と合わせて2回目だ。夜もなんて、しかもこんな雨の日でもつけてくるなんて今までなかった。
実際に誰かを見たわけじゃない。でも確かに、強く視線を感じるときがあった。週に2、3回ほど。自宅付近から駅に向かうときや、バイト終わりの帰り道。今日なんて大学構内まであとをつけられていた。
少しも怖くないと言えば、嘘になるけれど。
予感がする。あともうひとつ、何かが揃えば、私をつけている人も、その理由も、明るみになる予感が。
――知りたくない。
知ってしまったら、私は今とは別の道に立たされる。特別誇れるものじゃなくたって、うんと幸せじゃなくたって、私は私の生き方を揺るがされたくない。
脅かされたくないのだ。絶対に。