歌舞伎脚本 老いたる源氏
第二幕 玉鬘1
役名
源氏
玉鬘
惟光
お市
(本舞台三間の間 嵯峨野の小さな庵 藁葺の二重屋台
箪笥 仏壇 衝立 床敷き 源氏窓 上がり石 水瓶 おくど
遠見浅黄色山並み 朝顔に鶯の声 鹿威しなど 道具収まる)
(源氏、仏壇の前に端座し読経しています。お市賄い)
源氏 妙法蓮華経如来寿量品第十六 爾時佛告 諸菩薩及 一切大衆
諸善男子 汝等當信解 如来誠諦之語 又復告 諸大衆 汝等當信解
如来誠諦之語 是時菩薩大衆 弥勒為首 合掌白佛言 世尊・・・・
(惟光が天秤桶を担いで現れます)
惟光 鮎だよ、あゆ!
(トお市駆け寄り)
お市 (しわがれ声で)まあ、けっこうなこと。
惟光 大堰の堤で分けてもろうた。
(ト二人立ち上がり手をかざし遠見する)
惟光 あの藤糸毛車は玉鬘様じゃろうて。
お市 あの子だくさんの?
惟光 どうもおひとりのようじゃ。
お市 さっそく塩焼きに。
惟光 柚子も忘れんようにな。はよはよ。
(ト二人は桶を庵の中に担ぎ入れます)
惟光 雲隠さま、玉鬘様がお見えのようです。
(源氏、読経をやめて)
源氏 ふむ、久しぶりじゃなあ。五人の子持ちになっても、
さぞ美しいことじゃろう。
(ト山吹色の小袿、扇を手に仰ぎながら玉鬘が入ってきます)
玉鬘 お父上、おひさしゅう。ご機嫌いかがでございますか?
源氏 おお、玉鬘。よきかおりじゃのう。美しさが目に浮かぶ。
(ト玉鬘は単衣の裾を手おりながら上敷きににじり寄ってきます)
源氏 (鼻をくんくんさせ)ふむ、よき香りじゃ。これは?
玉鬘 老栴檀にございます。
源氏
玉鬘
惟光
お市
(本舞台三間の間 嵯峨野の小さな庵 藁葺の二重屋台
箪笥 仏壇 衝立 床敷き 源氏窓 上がり石 水瓶 おくど
遠見浅黄色山並み 朝顔に鶯の声 鹿威しなど 道具収まる)
(源氏、仏壇の前に端座し読経しています。お市賄い)
源氏 妙法蓮華経如来寿量品第十六 爾時佛告 諸菩薩及 一切大衆
諸善男子 汝等當信解 如来誠諦之語 又復告 諸大衆 汝等當信解
如来誠諦之語 是時菩薩大衆 弥勒為首 合掌白佛言 世尊・・・・
(惟光が天秤桶を担いで現れます)
惟光 鮎だよ、あゆ!
(トお市駆け寄り)
お市 (しわがれ声で)まあ、けっこうなこと。
惟光 大堰の堤で分けてもろうた。
(ト二人立ち上がり手をかざし遠見する)
惟光 あの藤糸毛車は玉鬘様じゃろうて。
お市 あの子だくさんの?
惟光 どうもおひとりのようじゃ。
お市 さっそく塩焼きに。
惟光 柚子も忘れんようにな。はよはよ。
(ト二人は桶を庵の中に担ぎ入れます)
惟光 雲隠さま、玉鬘様がお見えのようです。
(源氏、読経をやめて)
源氏 ふむ、久しぶりじゃなあ。五人の子持ちになっても、
さぞ美しいことじゃろう。
(ト山吹色の小袿、扇を手に仰ぎながら玉鬘が入ってきます)
玉鬘 お父上、おひさしゅう。ご機嫌いかがでございますか?
源氏 おお、玉鬘。よきかおりじゃのう。美しさが目に浮かぶ。
(ト玉鬘は単衣の裾を手おりながら上敷きににじり寄ってきます)
源氏 (鼻をくんくんさせ)ふむ、よき香りじゃ。これは?
玉鬘 老栴檀にございます。