いとし君へ
「ユリちゃん、さっき泣いてたよ」
「あ?ユリって誰だよ」
「おいおい、名前も知らない女とセックスしてたのかよ」
呆れたような顔で溜め息を吐かれた。
そう言えばそんなような名前を言ってた気がしたけど、正直やるだけなのに名前なんてどうでもいいだろ?顔だってもう思いだせねぇし。
「…関係ねぇだろ」
「さっすが、KINGは言うことが違うねぇ」
「お前マジうるせぇぞ」
この学園で俺は、いつしかKINGと呼ばれるようになった。
勉強なんてしなくても成績は常にトップ。運動もそこそここなし、極めつけは俺の親が多額の寄付金をしている為、教師のみならず学園側自体が俺には何も言ってこない。
暇つぶしに学校にきては殆どの時間を教室以外で過ごし、やりたくなったら適当に良さそうな女を見繕って。楯突く奴は力でねじ伏せる。
別に喧嘩は趣味じゃねぇけど、俺の事が気に食わない輩はどこにでもいるわけで。そうなったらやられてやる義理もねぇしムカつくからぶっ飛ばすだけ。
で、そのうちに自然と周りがKINGと呼ぶようになっただけだ。