いとし君へ
次々に女たちが集まって来ると、甘い香水の匂いが鼻を衝く。
オエ…、気持ちワル…。
「鴻上先輩!」
思わず鼻をつまみそうになった所で一人の女が俺の前に立った。
「…なに」
緩く巻かれたミルクティ色の長い髪と、白い肌に映えるピンク色のチーク。肌蹴た胸元から見せつけるように谷間が覗き、短めのスカートからは細く長い脚が伸びていた。
間違えなく、この女がクラスのリーダー的存在だろう。
ぐるりと教室内を見渡しても彼女が一番目立っている。
「私、松本沙羅です!」
「…ふーん」
「鴻上先輩の大ファンなんです!!」
綺麗に化粧の施された目を潤ませて上目使いで見上げて来る女の、そのあからさまな態度は正直うんざりするほど見慣れた光景だった。
なんとか俺のお手付きになろうと、女たちはこうして自分の武器を最大限に駆使して攻撃を仕掛けてくる。それはまぁ、いい。
ただ、いい加減同じような手口に飽き飽きしていた俺の機嫌はすこぶる悪かった。