屋上で待ってる
耳元で、傘に当たる雨の音が、やけに響いてくる。
「あ、えと」
─…あれ、なんでここに来たんだろう?
正直、自分でも分からなかった。
「あ、ごめんね?
ただ興味本意で聞いただけだから、答えたくないなら無理に答えなくていいんだよ。」
優しい紳士は少し慌てた。
目が合うと、戸惑いつつも微笑みかけてくれる。
気遣いが沁みてくる。
不意に込み上げてくる何かを抑えるように、私は彼に質問をした。
「あの、なんで貴方は私の事をそんなに知りたいんですか?」
名前も知らない、この目の前の人に初めて投げ掛けた質問。
「うーん…君のファンだから、じゃダメかな?」
裏表のない、そんな正直な答えにほっとした。何故だかは分からないけど。
「ていうか、ファンって…ふふ」
思わず照れて、笑ってしまった。
「あ、…─やっと笑った。」
突然私の顔を覗き込んだその瞳が優しくて、気を許してしまいそうだ、と思った。