屋上で待ってる
「そ、そういえば、貴方の名前聞いてないんですけど!」
どもってしまってるのが丸わかり。
動揺してるのがばれてるようで、彼はクスクスと笑い、口を開いた。
「そうだ、俺の自己紹介がまだだったよね?
今三年生で、名前は…うーん、そうだな」
あれ?そこは悩むところ?
「あー、じゃあ『変態』先輩で!」
「…はい?」
なんで本名教えてくれないんだろう?
ていうか、変態先輩って。
「呼びづらい…」
「まあまあ。」
「なんか、不平等な気がするんですけど。」
そう言ってふててみると、先輩は少し目を見開いて、そうだなあ、と笑った。
「じゃあ、さ。」
言葉を切って、私にぐっと顔を近づけてきた。
端正な顔に、少しいたづら心の色を魅せる目に、私の目が奪われる。
「また、ここにおいで。
─待ってるから。」
その優しげな声と、見せてもらったあの空の一瞬を捉えた写真。
それから、包容力のある瞳に、私にくれた言葉。
とても印象に残る、この変態先輩とこれから先、たくさんの出来事が起こるなんて、この時は考えもしなかった。