屋上で待ってる
「とりあえず、先輩なんだよね?」
こくりと頷く。
「名前が分からないっていうのがなぁ」
サンドイッチを口に運びながら情報網を巡らせている友ちゃん。
友ちゃんの情報を付け足すとすれば、友ちゃんはかなりのミーハーだ。
噂話は誰よりも早く知ってるし、イケメンの話なんかは特に。
…そんな友ちゃんですら分からない人ってことは、やっぱりあの先輩は夢だったんじゃないだろうか。
それなら、何となく寂しいような気もするけど。
でも──
「夕?誰かからメール?」
私が携帯を引っ張りだすと、芽衣が気になったようでこっちを見た。
「ううん。なんていうか…昨日のことが夢じゃ無かったかの確認?みたいな。」
「え?どういうこと?」
カメラのフォルダを開き、1つの写真をタッチする。
「わあ!綺麗な写真だね!」
画面を芽衣に見せると、写真を見て感嘆の声を上げた。
先輩が撮った、昨日のあの瞬間の空を捉えた、印象的な写真。
あのあと先輩が赤外線で送ってくれたものだ。
「…撮った先輩、きっと優しい人なんだろうね。光の柔らかさとか、すごく素敵。」
でしょ?
「なんていうか、昨日の出来事は私自身夢みたいに思ってたんだけど、この写真が昨日の証明みたいに思えてさ。」