屋上で待ってる





部活も終盤に差し掛かった頃。


顧問の佳澄先生に声を掛けられた。



「夕。なんか、最近いいことあった?」



「あ、はい。」


「よかった~、一昨日の字を見て本当心配したんだから。」



我が書道部は、大会は出ず、精神統一のために活動している。

まあ、そのせいで幽霊部員の方が参加人数より多いのだけど。



そんな書道部の顧問が、佳澄先生だ。

20代後半と若く、ふんわりとした雰囲気をまとっている。


見た目に反して、字を見ただけでその生徒の精神状態を把握できてしまうほど鋭い先生を、私たちは尊敬している。



どうやら字にも、私の変化が表れていたみたい。



変われる、きっと。



一昨日までは考えられなかったような希望が見えた気がする。



露村先輩は私にとって道しるべなのかも知れない。



「あらあら。」



目の前の先生が、にやにやしながらこちらを見ている。



…あれ、この光景、昼もみた気がする。



「ね?いった通りでしょ!先生。
夕が乙女なの!」



そうだ。友ちゃんたちだ。



そんなんじゃないのになぁ。

二人の反応に、私は苦笑を漏らした。














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