屋上で待ってる
いつも通っている家の前。
同じはずなのに違って見える。
それは、雲がかかって薄暗い空のせいなんだろうか。
中学の頃までは、まるで我が家のように、インターホンも押さずに入っては入り浸っていたのに。
いつの間にか覚えてしまった遠慮が、ドアの前で私を立ち止まらせていた。
…どうしよ。
メールの返信は、なかった。
けどそれが了承だってことは、暗黙の了解。
何か用事があったときだけ返信するのが私たちのルール。
「!」
そしてきっとそれは、まだ通用している。
「なに突っ立ってんのー?
早く入りなよ。」
やけにゆっくりとドアを開けた蓮が、いつも通りにと努めているのが分かる。
本当に蓮は、思ってることが顔に出ちゃうタイプだ。
…それは多分、私がこれから話すことに対しての、言い知れぬ不安。
「…うん。」
そのぎこちない笑顔には、何も言わなかった。
だってきっと、私も同じ顔をしているだろうから。