恋心コロコロ2~天使さまのいうとおり~
戸井田くんは、目を三角にして私に諭すように更に言葉を繋げる。

「 この間だって学食で唐辛子ばらまいて、おばちゃんに怒られてただろ?」


「うん。たしかにそうだったけど、
 
 なんでそんなこと知ってるの?」

「し、知ってたっていいだろ、

たまたまだ、たまたま。」

「そう?たまたま?」

私がじっと見ると

戸井田くんは一瞬ひるんだ

その隙に、

するすると横を抜けて階下へ向かう。

「私行かなきゃだから」

どうでもいいんだった。

私が今しないといけないのは、

下に落ちて散らばったかも知れないバケツの中身を回収することだ。

「鏑…っーー」


戸井田くんがなんか言ってるみたいだけど

もう無視した。

しかし私ってばなんでこうも、

おもちゃバケツに振り回されてるんだろう。


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昔は、地元の名家の子息の通うおぼっちゃまのための少数精鋭を育てるための学校。

時代が変わり共学になり、

その上、特進が新設になり、

急に生徒数を増やし、

建て増し建て増しで、

ちょっと迷路っぽいうちの校舎。

いずれは旧校舎を取り壊すらしいんだけど、

普通科と特進の差別化のためか、

ぼろぼろの校舎はそのまま存続されている。


『この辺だったかな?』

バケツが落ちた旧校舎と新校舎のつなぎ目は入り組んで、」

地図で見た、

そうそうリアス式海岸みたいだ。





























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