恋心コロコロ2~天使さまのいうとおり~
俺にとっての特別は、

あいつただ一人だった。

手を伸ばせば届く距離にあいつはいて、

そこに確かにあるのに、

心は俺に預けてくれない。


その場所の一番には他の奴がいるから。





奪いたいと思う気持ちがないわけじゃない。

でも、彼女の泣き顔なんて見たくないし、

彼女の未来を変えたいとか思うわけじゃない。


ただ、ただ、笑ってほしい思う


どうしようもなく俺の心を占めるあいつ


執着なのかもしれない。



けれど、俺にはそれが今ここにいる理由だから。



きっとこれはトラウマなんだ


意識を失って、息が止まって、


掌からこぼれていこうとする命。



目の前でまるでドラマなかの一場面みたいに、

繰り広げられる事を、

ただただ呆然と見ていた。

ずっとずっとベットの上で笑っていた妹。


俺たち家族は妹を生かすために異国の地で出会った俺たち。


双子の妹と

同室で、同じ病気だった凛花。

凛花の幼馴染のあいつ。

そして、芽生えた二つの恋。


妹とあいつ

凛花と俺




なのに、

なのに、

そこで更に衰弱していく妹を、

自分ではできることなくただその場に立ちすくんでいた。




誰のせいなんだ、

誰のせいでたった一人の妹は命の火は消えかけて、


八つ当たりした

小さな女の子。


大きなまあるい目で俺を見上げ、

『きっと大丈夫。絶対大丈夫

 だってこんなに大切にしてくれる人がいるんだもん』


気休めなんていくらでも聞いてきた。

けれど、同じ病気のあいつから言われた言葉は、


真っ暗な俺の心に光る石を投げたんだ。


そして

あいつは俺の特別になった。


凛、尾白凛花。

俺はあの頃からお前だけだった。






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