秋の扇

***

「..もしもし。アキ?」

『...おう。珍しいな。お前からかけてくるなんて。。』

「うん...ちょっと、今日話があるんだけど..」

『......話?..バイト終わったらメールしとく。俺行ったほうがいいのか?』

つわりが心配だからなるべく安静にしていたい。

「..なんで、」

『..え?』

「いつもそんなこと言わないのに、」

『..お前からかけてくんの珍しいから。なんかあったんだろ。それでも動かないほど腐ってねーし。』

電話の向こう側で、アキは小さく笑った。

「...うん。来てほしい。丘公園で待ってる。」

『わかった。じゃ..』

アキはまだ死んでない。

確かに随分変わってしまったけど。

時々本当のアキが出るから。

さりげない気づかいが出来て。

優しくて。責任感が強くて。

そんなアキをまだ信じてるから。

私は離れられないんだ。
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