ヲタク女と呼ばないで!
「はい・・・?」

眠気満点な声で、応答した相手の声は、やけに興奮気味だった。

「カンナ!?寝てた!?カンナ!?ねー聞いてよ!」

声の主は、美大のヲタク仲間、美緒。

美緒とはいわば同志で戦友、一緒に漫画家を目指して日々切磋琢磨、お互いデビューを目指している親友だ。

「夏コミ!この間応募したって言ったでしょ?なんと通ったよ!!」

「え・・・・!?」

私は一瞬言葉を失った。

「って美緒、なんの実績も無いから絶対通らないって言ってたじゃん。」

「うん、ホントびっくり。」

どうやらマジらしい。

「でさー、相談なんだけど・・・。」

散々、興奮を電話越しにぶちまけたあと、美緒は少しだけ声のトーンを落として言った。

「ん?」

「いや・・・、やっぱりさ・・・。夏コミに出すには、それなりに先立つものが必要でさ・・・。」

「先立つ・・・ん?」

それはお金ですか・・・。いったいいくらくらいかかるんだろう。

参加費から、出版費・・・。ほかにもいろいろ・・・。

私は財布をのぞいてみる。福沢諭吉大先生なんぞはしばらくおがんだことない。

けど、まさか紙幣が無いとは・・・!五百円玉がやけに重く感じる。

私はまだ硬貨しかもてない、石器時代の末裔かもしれない。
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