むげんはなび
むげんはなび
浴衣、合わせ目、夏祭り
────あ、夏目だ。
祭りの喧騒の中。
俺、水谷 周(みずたに しゅう)はちょっと気になるクラスメート、夏目 花奈(なつめ かな)を見つけた。
素直な彼女を気になっている奴。
いや、好きな奴はひとりやふたりじゃない。
恋心を抱いていなくても、男女共に夏目に対して好意を向けている。
本人は気づいていないけどな。
彼女の柔らかい雰囲気を表すような、真ん中分けの黒髪ふわふわロングヘア。
大きな瞳に天真爛漫で無邪気な姿。
にこにこしたり、恥ずかしがったり、むすっと膨れたりと表情は豊か。
そして、ドジ。
とにっかくドジなんだ。
なにもないところで転ける。
ものをよくなくす、落とす。
それどころか、自分自身も階段から落ちている。
真面目に授業を受けていたはずなのに、何故か教科書を読むところを間違える。
夏目ならなにをしでかしてもおかしくない。
いつしかクラスの中にはそんな思いが共通になったんだ。
< 1 / 27 >