むげんはなび
ヨーヨー、簪、タイミング
*
「あ」
「ん、どうした?」
落ちたりんご飴は拾って近くのゴミ箱に捨て、他も見ようと歩き始めて。
そして、早々に足を止めた夏目。
視線の先には、ヨーヨー釣りだ。
「やりたい?」
「え、ううん、違うの!
わたし、1度もヨーヨー釣りで釣れたことがなかったから見てただけ!
あんまり持ちもの増やしちゃだめだし、うん、気にしないで」
顔の前で手を大きく振るから、浴衣の袖がゆらゆらと揺れている。
「1度も?」
「え?」
「1度も取れたことないの?」
「あ、えっと、まぁ……」
「じゃあ俺が取らせてやる」
にっと笑って屋台に近づいて、おじさんに「一回させて」と声をかける。
きょとん、としている夏目にこよりを握らせ、ストンとしゃがませた。
「夏目はどれが欲しいわけ」
「え、えと、あの水色の……?」
オッケーと軽く答えて、指で突いて近くに寄せる。
周りの小学生たちがちらりと俺たちに視線をやる中。
俺もしゃがみこんだ。
────夏目を抱えるようにして。