むげんはなび
「俺も、ひとりなんだ」
やけに早い心臓の音。
その場所は耳まで遠いはずなのに、なんでこんなに大きく聞こえるんだよ。
喉が渇いて、あつくて、熱にうかされているみたいになって。
それでも告げる。
「一緒に回るか……?」
「……え、いいの⁈」
んー、と気のないふりをした返事をし、目を逸らしながらも頷く。
「すごく嬉しい!
わたしね、水谷くんとこうやって浴衣を着て、お祭り回るのが夢だったんだぁ」
ふわふわ、にっこり。
笑って彼女が口にした、とんでもない爆弾発言に顔を覆う。
「お前さー、なに?
その天然ドジっぷりはなんなの?
俺は恥ずかしいぞー」
「え? ……ひゃああああのっ、ちちちちが、わないけど」
「違わないのか」
顔を赤くさせて、頬に手を当てて、必死で言葉を発する夏目。
うん、やっぱこいつ、めちゃくちゃ可愛い。
くしゃりと彼女の髪に触れる。
溶けるようになめらかな触り心地は、惜しいと思ってもすぐに消えてしまった。
「そろそろ回ろうか。夢、だったんだろ?」
にやーっと笑った俺に大人しくなり、頷いて。
歩き始めた俺の隣に並んだ。