むげんはなび
ドジ、スマホ、りんご飴
*
口を大きく開けて、ぱくり。
熱々のたこ焼きを口に含んだ。
ソースとマヨネーズの香りやトロトロの生地。
屋台のものはその場の雰囲気からか、やけに美味く感じる。
俺たちは屋台の立ち並ぶ大通りから少し逸れた、植木のそばに座っている。
買ったものを口に運びながら、遠目に祭りを見つめていた。
キャーキャーと盛り上がる甚平姿の女子の集まり。
キラキラした浴衣姿の女子は複数の男子に囲まれている。
走り回る子どもがいれば、洋服でデートしている男女と各々祭りを楽しんでいるんだな。
「水谷くん、りんご飴を奢ってくれてありがとう」
「んーいいよ。
どうせ藤原(ふじはら)たちに奢ってやるはずだったから」
藤原、というのは俺がいつもつるんでいる中のひとりの名前。
奢る話になっていたのは、夏休み前にした内輪だけのカラオケ大会の罰ゲーム。
優勝者が奢るとかどんなだよって話だよな。
いつも俺が勝つからってのが見え見えだったし、別に夏目にでも''奢った''ことには変わりないしいいだろ。