LOVEPAIN④

「指輪の事、ナツキさんには言わなかったんだ?」



「え?あ、うん」



今、須田が見ているのは、
件のカルティエの指輪




「ナツキさんが最近お前と会った時、
その指輪をまだ大切にしていた、って言うから。
なんか複雑で。

かと言って、俺があげたやつじゃないって言えなくて」



「そうだよね…」



ナツキは、私のカルティエの指輪を須田から貰った物のままだと思っている


本当は、本物を盗んだ成瀬が罪悪感で用意した、代用品なのに




「広子、幸せになれよ」


そう笑顔で言われて、
須田のこんな優しい顔を初めて見たような気がした




「――ありがとう」



幸せにならなければ、
須田に悪いような気がした



本当に、ありがとう




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