拾われた少女
ジュリアは手に持っていたタオルを床にぽとりと落とした。
「えぇーー!?
 ルキア様に温室の鍵を貰ったのですか?」
「え…えぇ」
アリシアはそれを拾い上げながら答えた。
今日はルキア様に連れて行ってもらった庭園が楽しく、鍵を貰ったのでまた行きたいと言ったのだが…この驚きようは何なのだろう
「…本当ですか?」
ジュリアは尚も信じられないといった風に尋ねてくる。
「好きな時に来ていいと…どうかしたの?」
それを聞いたジュリアの目はさっきよりもさらに大きく見開かれた。
「庭園は常に鍵が掛けられていて、ルキア様の許可なく入ることはできないんです。
時々、定期清掃に高位の女官が入るくらいで…私も一度もあの部屋には入ったことないんです
…あそこは亡くなったルキア様のお母様が大切にされていた庭園だと聞きました。
まさかルキア様がそこに他人を招くなんて…」
誰も入ることを許されていないーー?
でも彼はついて来いと…
好きな時に訪れていいと言ってくれた。
それは花の大好きなアリシアにとって素直に嬉しいことだった。
自分の部屋以外で兵士の目を気にせず、花に囲まれて香りを楽しむことのできる空間
それがお母様が造られたルキア様にとって思い出の室内庭園だったなんて…
そんな大切な場所の鍵をなぜ私に…!?
アリシアには考えてもわからなかった。
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