拾われた少女
エストリアの過去にそんなことがあったなんてそしてルキア様は王室に継ぐ名家であるヴィルフォードの血を引く方…

ルキアは窓から顔を背け、アリシアを真っすぐにみた。
「アリシア……お前の親は絶対見つける。
住んでいた場所に必ず帰してやる。」
後半は自分に言い聞かせるように…

保護する形でここまで連れてきたとはいえ、アリシアには元々住んでいた戻るべき場所がある
きっと帰りをいまかいまかと待ち望む家族もいるだろう
早くその場に帰してやりたいと願うが
ルキアの内にはどうにかして彼女を引きとどめておきたいという想いも芽生え始めていた。
アリシアは今までルキアが見てきた数多くのどの女とも違っていた。
淀みのない澄んだ瞳でルキアをみつめ
偽りのない感情を言葉で態度で表す
彼女といて飽きることはなく、それどころかまだ慣れない公務で心身共に疲労していたルキアに安らぎを与えていた。


「何か些細なことでも思い出したら俺に言え」
「ありがとうございます」
ルキアが柔らかな表情を見せるとアリシアも微笑みを返した。

ルキアが部屋を後にし、アリシアだけがその場に残るとアリシアは力を失ったかのように足からヘナヘナと座り込んだ。
『アリシア』
「初めて名前で呼ばれた…」
両頬を手で包んでみればそれは若干の微熱をアリシアに伝える。
熱でもあるのかとアリシアは必死で火照る顔を冷まそうとする。
アリシアがその微熱の正体に気づくのはもう少し先のことーー…


< 28 / 40 >

この作品をシェア

pagetop