離さないから。
「お美しい眺めですね。」
私と鎖は山奥の別荘にいる。
かけおちをすることにしたのだ。あのまま自分の居場所に帰ればきっと離れなければいけない。なら、皆にバレないように静かに暮らそうと決めた。
「…………本当にいいのか?」
「………なぜそんな事を聞くんですか?私は自分の幸せを叶えることができたからいいんです。幸せ!!」
「そうか。俺も幸せだな。」
夜には鎖が簡単な料理を作ってくれて、その後は一緒に寝る。
朝には一緒に起きて散歩したり。
こんな生活が一年続いた。
一年もたつと薬を飲んだりしてない私の体は衰弱し、ベッドの上での生活になってしまった。
「大丈夫か?」
「………は、い。」
「………きっと治る。」
鎖…………きっと私は治らない。だから…………
「く、さり、………私は幸せだったわ。鎖と二人だけの世界に居られて………鎖に迷惑をかけてしまった。」
「大丈夫だから、そんな事言うな…………!!」
鎖の目には涙があった。
「泣かないで下さい。まだ…………死にたくない。けれど私は鎖の死を見なくてすむのね。それだけでも幸せ…………。鎖、ありがとう……………………………
す、きよ…………。」