タカラモノ~桜色の片道切符~
「僕も聞きたいことあるんですけどいいですか?」




目の前にあるグラスはいつの間にかグレープフルーツジュースに変わっていた。



「あ、はい。どうぞ」



遠慮気味にグラスに口をつけながら、理桜の方を見た。


「恋愛小説が多いですが実体験って入っているんですか?」


「どう……でしょう?」


「リアルな恋愛描写は年上の方からも評判良いですよ」


恥ずかしくなってきて、思わず話題を変えた。


「あの、桜が綺麗なところってどこですか?私の出身も桜が綺麗な町だったんです」



「それはご想像に。桜井先生はどこなんですか?」



「私はT県のT市です。田舎なんで知らないと思いますが…」



一瞬、理桜のポーカーフェイスが崩れたことにドリンクに視線を置いていた美桜は気がつかなかった。



「ただいま。コウ」



部屋の扉をあけると真正面のソファーに座るテディベアに話しかける。



あの時以来続いている習慣。隣に腰掛けぎゅっと抱きしめる。



「今日の取材緊張しちゃった。みんな真剣に答えてくれて参考になった。褒めちぎられたのは恥ずかしかったけど」



一人暮らしの部屋に響くのは自分の声のみ。子どもっぽい、誰にも言えない精神安定剤



一通り話しかけるとパソコンを立ち上げ取材のまとめに取り掛かる。




まとめはどうにか出来たもののどうにもプロットがまとまらない。



「初恋か…」



大きく伸びをする。初恋は実らない。


私の初恋は……






実る実らない以前に確認する術はもうないのだ











。甘くて、苦くて、酸っぱくて。色々な味がする。











何度も書いてきたはずなのに書けるのか不安になってきた
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