タカラモノ~桜色の片道切符~
腕の中で体重を預け、安心したように寝息をたてる美桜。


息の荒さはなく、気持ち良さそうに眠っている。


起こさないようにそっと長い髪に触れた。



「美桜」



ブランケットを怪我に触れないようそっと肩まで引き上げた



「ずっと傍にいるから」



抱きしめる腕の強さを僅かに強めた。






次に目が覚めると、理央くんの腕の中だった。



「おはよ。と言っても昼過ぎているけど」


左手を伸ばし、そっと彼の頬に触れた。



「美桜?」



『理央くん』
理央くんは私の気持ちを読み取ってくれるけど、ちゃんと自分の言葉で伝えたい。


背中越しに見えた自分の鞄を指差した。



「鞄?」



小さく頷いた。中には仕事道具でもあるポメラが入っている。


あれなら左手でも何とか打てるから




「何かいる?佐々木さんにはもう連絡はいっているはずだけど」



積み上げたクッションに凭れかけながら、左手でどうにかポメラを取り出した。



『ありがとう。ごめんね』



いつもより時間がかかるが、どうにか打ち込むことができた。



「美桜のせいじゃないって言ってるだろ?」



画面に表示された文字を追いながら、優しく抱きしめてくれた。



< 101 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop