タカラモノ~桜色の片道切符~
櫻海線の廃線の日、私は彼の祖母と父親の墓の前に立っていた。
「理央くん……航大くん」
背中に感じる人の気配に振り向かずに彼の人名前を呼んだ。
間違えるはずのない名前。
彼が私の全てを肯定してくれたように、私も彼の全てを受け入れよう。
「美桜」
名前を呼ばれ振り向いた先にはシックな黒のロングコートを着た彼の姿
「ごめんなさい」
何への謝罪なのかはもうわからない
「心配した。……でも声戻ってよかった。顔色も悪くないし」
「ごめんなさい」
彼の優しさが辛くて逃げたあの日
「謝って欲しいわけじゃない。跡は?」
「服で隠れるし。薄っすらとしたものだから」
「そう」
彼がこちらへと近づいてくる
「ここに来るの納骨以来なんだ」
しゃがんで手を合わせる背中に嘘は感じられない