タカラモノ~桜色の片道切符~
「うん」


彼にとってこの地は、私や優はどんなものなのだろうか


「ホントは帰ってきたかった」


「うん」


「美桜は勘違いしているかも知れないけど、ここでの思い出が辛いって思ったことはないから」


「……うん」


僅かに薫る潮風が頬を刺す

「勿論ばあちゃんや父さんとの別れは悲しかった」

「うん」


「でも美桜や優、学校の友達、楽しい思い出ばかりだから」


「うん」


墓石を見つめたまま話し続ける彼にただ相槌を打ち続ける。背中から表情は読めない


「あの日の前夜、母さんから美桜たちと2度会えなくなるって聞いて、覚えて欲しくてぬいぐるみを渡したんだ」



「……まだあるよ。向こうのリビングに座ってる」



「……」




肩がピクリと動いた気がした
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