タカラモノ~桜色の片道切符~
それから1ヶ月。どうにか最初のプロットを完成させ、徹夜明けの眠たい瞳で講義へとでていた。


何回あくびを噛み殺しただろう。


「うーん」


授業後、ゼミ担当との卒論相談を終えると13時近くだった。



日差しも大分強くなってきている。書籍を探しに都心へとでることにした。



ビル風が強く吹き付けて飛ばされそう。


そう思った瞬間、風が強くなり、被っていた帽子が飛ばされて


街路樹の高いところに引っかかってしまった。



「どうしよう。気に入っていたのに」



何度かジャンプをしてみるが届かない。



時間的に人通りも少なく、目立たないのが幸いだけど、150cm以下の身長が恨めしい



「どうぞ」



目の前に影が伸びたと思うと、引っかかっていたはずの帽子は私の頭の上に戻っている。



「あ、ありがとうございます」



頭を上げると視線の先にいたのは…



「理桜さん?」



「……桜井センセ?」



「センセはやめてください。一応は素顔非公開の身ですし。」



「じゃ、僕も理桜で。僕のほうが年下でしょ。えーっと」



「……美桜です。本名、美しい桜って書いて美桜」



そう言って小さく笑うと彼は酷く驚いた顔をした。


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