タカラモノ~桜色の片道切符~
「え?」




「覚えてない?最初にうちに連れてきたとき譫言で俺の名前呼んだの」



記憶の糸を必死に手繰り寄せてみる。

……確かに子どもの頃彼とあの箱を埋めた夢を見ていた


「子どもの頃の夢を見ていて、無意識に呼んだのかも」


「正直にびっくりして、でも疑問というか疑惑が晴れたというか。店で出身地聞いたときもしかしてって感情(おもい)があったから」


離れていた距離が少しずつ、彼が私の元へ歩いてくることによって近づいていく。


あっという間にもう目の前にいた


「あの約束まだ有効?」



錆付いたクッキー缶。昔二人で埋めたものだ。

大人になったら開けようね。と


「取ってきてくれたんだ。何入れたか思い出せないんだよね」


「俺も。悪いと思ったけど、先に中見せて貰った」


箱の中は錆付いた外とは違って昔のままで


「ゆびわ?」


駄菓子屋のくじで当てたものを彼が私にくれたのだった


「おとなになったらけっこんします」


たどたどしい平仮名で画用紙いっぱいに書かれた文字


「りおくん?」


右手を取られ、薬指に嵌められた指輪



「まだ嵌められるなんてやっぱり美桜細すぎ」



からかうようで心配する声


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