タカラモノ~桜色の片道切符~
「理桜くん。お茶代……」
「良いですよ。それ位、どこですか?送ります」
「お礼だったのに、迷惑ばかりかけて」
年上の自分が情けなくなってくる
「迷惑だと思っていたら言わないですよ。こんなこと」
「……S区」
「タクシー拾ったほうがよさそうですね」
タクシーを拾うと手際よく美桜を乗せ隣に乗り込む。美桜が行き先を告げるとタクシーは走り出した。
「どうぞ」
車内で手渡された仕事用の名刺。理桜と書かれた名刺を裏返すと、携帯の番号とアドレスが書かれてい
た。
「え?」
「この間の取材のプロット直すんでしょ?何かあったら聞いてくれてかまわないですから」
「ありがとうございます」
20分ほど走ると車はマンションまで到着した。
「ここで。今日はごめんなさい。本当にありがとうございました」
財布を取り出そうとすると理桜くんの手に止められた
「良いですよ」
「でも」
「じゃあまた。1時間でもいいのでちゃんと眠ってくださいね」
タクシーは再び都心へと向かっていった。
「ただいま。コウ」
いつもと同じようにくまを抱きしめる。初恋か……。
パソコンを立ち上げ佐々木さんからの細かい訂正の入ったメールをチェックする。私らしくない
「何だろう」
何かいつもと違う。書けない。
悩みに悩みながら、展開を決めプロットを完成させると時刻は午前5時半。
佐々木さんにメールを送ると眠気覚ましに濃い目の紅茶を淹れる。
あとは、司書科目のレポート、制限時間は3時間
どうにかなるだろう。あんなこと言われたけれどでも眠ると絶対に起きる自信はない。
「仕方ない。徹夜か」
2時間でレポートを仕上げ、シャワーを浴びると急いで大学へと向かった。