タカラモノ~桜色の片道切符~
洗いたてのシャンプーの香り、まだ乾ききっていない長めの髪から、零れ落ちる滴。


全てが私の心に浸入していく。一つ、また一つと真っ白な彼のシャツに涙の染みを作っていった。



「美桜」


名前を呼ばれ、顔を上げると、細くて長い指が頬に残る涙を拭った。



「り、おくん?」



彼の瞳に映るのは優しさと切なさ。どこか遠くを見ている瞳



抱きしめられている腕に少し力が入った。刹那、唇に感じた優しく柔らかい感触と確かな体温(ぬくもり)



一瞬戸惑いを見せながらも美桜はギュっと瞳を閉じた。



「わ、悪い」





離れた口元から零れた理桜の第一声、美桜は小さく首を振ると、自分からもう一度唇を重ねた。




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