タカラモノ~桜色の片道切符~
「美桜ちゃん。ホントに大丈夫?」



「は、はい」



「休息も大事な仕事なんだからね」



何度も念を押すように言うと電話は切れた。



書くことが私の存在意義。書いている間は何もかも忘れられる。



書かない私は?




「美桜?」



「あ、ごめんなさい。大丈夫だから」



「なら休む。その顔色で大丈夫って言っても誰も信用しない」



背中のクッションをそっと抜き、横たえた。



「まだ身体は疲れているはずだから」


眠れるはずない。そう思っていたのにゆっくりと同じペースで髪を撫ぜ続ける理央くんの手がとても温かくて、優しく夢へと導いてくれた。




「おやすみ」




囁いた理央の言葉が最後まで聞こえなかった。




寝息が確かなものになったのを確認し、そっと部屋を出た。






ソファーに腰を下ろし、ドッと息を吐く。




昨日の涙は彼女の負の感情のほんの一部。




ごめんと大丈夫ばかり聞いた気がする。




「……お」
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