タカラモノ~桜色の片道切符~
「美桜?」




思っていたよりも時間が過ぎていたようで、扉の向こうから理央の心配そうな声が聞こえた。




「ご、ごめんなさい」




「慌てなくていい。外で待ってる」




真新しいタオルに身を包み、残った水分を吸わせる。



渡された袋の中から比較的動きやすそうなものを選び取った。




「下着まで…。服も普通サイズじゃないなのに……」




できるだけ早く身につけ、扉を開けると、すぐ傍の壁に寄りかかる理央の姿があった



「気分は?服は大丈夫みたいだったな」




「大丈夫。ありがとう」



理央に促されるようにして、寝室へと足を進めた。



「眠らなくてもいいから横になってろ……その前に髪だな」




バスルームからドライヤーを持ってくると、理央は肩にかかる美桜の黒髪に温風を当て始めた。



「じ、自分で……」



「良いから」



細い指の感触が僅かに伝わる。



「理央くん、器用だね」



「そうでもないと思うけど」



「私よく、焦がすから」



ドライヤーを使っていてよく髪を焦がしてしまう



「美桜が鈍いんじゃ…?」



「酷い!」



確かに多少ドジなのは認めるが



「終わり。寝ろ」




ブラッシングまで終えた理央がブランケットを捲って促した。
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