タカラモノ~桜色の片道切符~
泣き疲れたのか気を失うように眠ってしまった




「美桜」



唇に触れるようなキスをすると静かに寝室の扉を閉めた



リビングのソファーにそっと腰を下ろし、落ちてきた前髪を掻き揚げた。



もう1度病院に連れて行ったほうが良いかもしれない。考えていると玄関のインターフォンが鳴った



「はい。……オーナー?」



オートロックを解除して、中に招き入れる



「悪いな」



「いえ。どうして?」



「これ、愛美から」






「社長から?」
渡されたのは有名なケーキ店の箱。中には色とりどりのフルーツゼリーが入っていた




「彼女は?」



「眠ってます。起きている体力がないと言った方が正しい気がしますけど」



思わず本音が零れた



「今夜休みで良いから。同伴入ってないだろ」



「はい。でも」



「一人にできないんだろ?」



少しずつ心の奥底を吐き出してくれた。そんな今の美桜を置いていく事は不安だった




「……ありがとうございます」



オーナーが帰った後、寝室に入ると美桜はまだ小さく寝息をたてていた



表情を見る限り夢は見ていないようだ。




そっと小さな手に触れると弱い力で握り返された。




「こ……いくん」




「っ」




運命(さだめ)はある。美桜の小説のワンフレーズが思い出される。














呼ばれた名前は捨てたはずの名前……
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