タカラモノ~桜色の片道切符~
「理央くん」



「じゃ行く?」



何ともベタな場所で待ち合わせをして映画館へ。



マンションへ送って貰ってから1週間。デートと呼ばれるものは今日が初めて。




「自分の作品見るのってどんな気分なわけ?」



「う~ん。ワクワクが1番かな。餅は餅屋な主義だから、どんな風に捉えてくれるか楽しみなんだよね」



見に行く映画は自分の作品を映画化したもの。若手実力派として活躍する子が主役を演じてくれている



「1度は見ているんだろ?」



「あ、うん。関係者向けの試写をね」



「どうだった?」



「良かったよ。私の中での真央にピッタリだったし」




平日でもシネコンはそれなりに人が入っていた。



会話に耳を立てると、私の小説の映画を見に来てくれているらしい。



こんな風に見知らぬ人が話しているのを改めて聞くと嬉しさと恥ずかしさが溢れ出してくる



「何か飲む?」



「じゃありんごジュース」



「わかった。Sでいい?」



「うん」
柱に背中を預け、周りを見渡した。







職業柄というべきか、人間観察をする癖がついてしまった。


何かわけありの二人だなとか、これから大切な人に会いにいくのかなとか、小さなことから話を広げていくのが仕事だと思うから、ついつい細かいところまで目が行く



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