タカラモノ~桜色の片道切符~
願いが通じたのか、百合子は何とか持ち直してくれた。意識はまだ戻ってないけれど



「良かった……ねえ、優。櫻海線乗らない?」



お互い、明日には帰るという今日。



彼の家があった場所に行ってみようと思った。今日を逃すと廃線の日しか乗る機会はない。



「良いけど。あの場所?」



「うん」



ガタリ、ディーゼルのワンマンカーに揺られ、目的の場所を目指す。



「次は櫻田、さくらだ」



手動の扉を開け、無人駅に二人で下りた。



ここまで来るのは何年ぶりだろう。おぼろげな記憶を頼りに歩き出した。



「ここだ」



何もない。売地の看板とロープがあるだけ。ここに彼の家があった。



「懐かしいな」



「うん」




少し奥まったコンクリートの玄関。



居間への長い廊下。居間の前に仏間があって、よく遊んだ子ども部屋へと繋がっていた



「何があったんだろうな」



「何が」



両親に聞けない。あの日のこと。年齢的には私も優も大人になった。でも



「あら?」



後ろから声をかけられ思わず振り返った



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