タカラモノ~桜色の片道切符~
写真が好きだった彼の父親が撮ってくれた1枚。同じものが私のアルバムにもある



「……はい。私で間違えないです。でもどうして」



この写真がここに?



「その前に3人のご関係をお聞きしても?」



「私と弟の優、そしていとこの航大くんです」



「そう、ですか。この写真は昔ここにいた子のものなんです」



ピースは集まった。後は埋めるだけ




「プライバシーもありますし、違ったら忘れて貰おうと思ったんですけど、貴女のいとこがここにいたんです」




「……はい」



「勿論、彼の母親が外国人だったこともご存知ですよね」



「はい」



綺麗で、優しい人だった。外国人独特の日本語のアクセントを今も耳が覚えている




「彼がここに来たのは8歳の頃です」



「あの、彼には弟がいたと思うんですが」



「ここに預けられたのは彼一人でした」



どういうこと?別れた後時間が経たないうちに施設に?



「彼をここに預け、小さな弟だけを連れて祖国へ。言葉で苦労することを思っての最後の愛情だったのではと思っています」



泣いちゃ駄目だ。愛情?



「その後縁あって養子にいったのですが……」



その先は耳を塞ぎたくなるようなものだった。お金のため。



そう言った彼の言葉が、表情が浮かんで頭から離れなかった



何も考えられなくなって、理央くんからの連絡に答えなかった




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