タカラモノ~桜色の片道切符~
「後でまた、詳しくお話しを伺いにいくかと」



「わかりました」



元はといえば自分の蒔いた種だ



「こっちの病室。眠っているから静かにね」



「はい」



案内された病室の扉を出来るだけ音をたてずに開け、中に入っていく。



ベッドで眠る美桜の右腕はその細さに似合わない包帯が巻かれていた。駅に送ったあの日より痩せている。



「美桜。ごめん」



優しく髪を撫ぜると、薄っすらと開けた瞳と目が合った



「美桜?起こした?」



真っ赤な景色が途切れた後、最初に映ったのは真っ白な世界だった



「美桜?わかる?」



会いたくて、会いたくない人。



『理央くん』



紡ごうとした言葉は音にならなかった



「美桜。ちょっと待ってて」



理央くんは病室から出て行った。廊下で何か話しているみたい



遠慮目なノック音の後、理央くんと白衣を着たオーナーさん位の男の人



「気がついたみたいだね。初めまして。治療を担当した三條です」



胸元のネームプレートには三條大地の文字。治療?そうだ。腕を切られて……



「右腕は13針縫った。薄くなるけど跡は残っちゃうかな」



「     」



答えは声にならなくて



「いいよ。質問するから頷くか首を振るかで答えて」



小さく頷いた



「痛む?」



首を横に振った



「まだ麻酔効いているからね。欲しいものはある?」



また首を横に振った



「何日か入院して貰うけどいい?」



真っ白な世界は好きじゃない。



頷くべきなのだろうけど、首を横に振ってみた



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