タカラモノ~桜色の片道切符~
優しく触れる手が余計に辛い。優しくしないで。優しくされる権利なんてないのに



『ごめんなさい』


謝るのは私の方なのに



「締めるな」



右腕に触れないように気をつけながら、助手席のシートベルトを締めた。


自身のベルトも締めると、ブレーキを踏みエンジンをかける。



「入って」



開けた扉の前で立ち尽くす美桜の背中を軽く押す。


動かない美桜にため息を押し殺し、そっと抱き上げた。エントランスの段差に座らせ、靴を脱がす



『理央くん』



「いつまでも動かないからだろ」



靴を脱ぎ、もう1度美桜を抱き上げ寝室を目指した。


初めて連れてきた日と同じくらいに軽い。多分碌に食べていないんだろう。



「ちゃんと寝てろよ。何か作ってくるから」



ベッドに押し込むと、寝室への扉を開けたままキッチンに立つ。



「美桜。薬あるからある程度は食って」



トレイをサイドテーブルに置くと、支えるように美桜を抱え起こした。



「口あけて。その手じゃ食べられないだろうから」



怪我をした右腕は吊ってある。



「美桜」


僅かに開いた口に一口分を入れた

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